DNS (Domain Name System) における委任の仕組みを学習し,設定作業を行う.
前回と同じIP による接続の設定を行う. 床から出ているケーブルを各 PC に接続せよ.
各 pc の名前を,班番号の 2 桁表記を A とすると 各班の教卓に向かって左側から pcA1, pcA2,...,pcA4 とする.
キーボード左上のシールの番号の下2桁の数字がxx とすると,その計算機の IP アドレスを 172.17.2.xx とする.
他の情報は全てのホストで共通である. サブネットマスクは 255.255.0.0, デフォルトゲートウェイは 172.17.254.254, DNSサーバのアドレスは 172.17.2.60, として設定せよ. ここまでの設定は実習を通して変更しない.
教卓 PC の準備完了のアナウンスがあれば この状態で教卓のホスト pc151:172.17.2.60/16, pc152:172.17.2.61/16 への接続ができるか ping で調査せよ.また nslookup を使い,pc151.1b202.jt.u-tokai.ac.jp の名前解決ができているかどうかを 確認せよ.
実習 3.1 と実習 3.2 では教卓サーバの設定が変わるので 時間帯を区切って実習 3.1 と実習 3.2 を行う.
班の番号の 2 桁表記を Aとする. 実習 3.1 で構成するドメインの構造を図 10.1 に示す.
図 10.1. 実習3.1 のドメインの構成
まず前回の実験を参考に pcA3 にネームサーバをインストールする. pcA1 と pcA3 でネームサーバを稼働させ, gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp ドメインを pcA1 が担当し, pcA3 が sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp ドメインを 担当する. pcA1 は sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp ドメインを pcA3 に委任する構成である. 1b202.jt.u-tokai.ac.jp ドメイン のサーバ (pc151) から各 pcA1 への委任設定はすでにされている.
まず,pcA1 のネームサーバの設定を行う. このネームサーバは gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp ドメイン を担当する.このドメインに属する pcA1, pcA2 の IP アドレスの解決ができるように正引きの設定をしなければならない.
前回同様 named.conf.local に gA.1b202.u-tokai.ac.jp ドメイン の問い合わせが来た場合の設定を追加する.
このドメインに対する 問い合わせの答えを記述するファイルを /etc/bind/db.gA とする. この場合以下の行を named.conf.local の最後に挿入すればよい.
zone "gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp" { type master; file "/etc/bind/db.gA"; };
図 10.2 named.conf.local
次に gA.1b202.u-tokai.ac.jp ドメイン の問い合わせがあった場合に参照されるファイル, /etc/bind/db.gA の内容を記述する. このファイルの内容は以下のようにすればよい. 172.17.2.XXX を pcA1 の IP アドレス, 172.17.2.YYY を pcA2 の IP アドレスとする.
$TTL 604800 @ IN SOA pcA1.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp. root.pcA1.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp. ( 201306171 ; Serial 604800 ; Refresh 86400 ; Retry 2419200 ; Expire 604800 ); Negative Cache TTL ; @ IN NS pcA1.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp. pcA1 IN A 172.17.2.XXX pcA2 IN A 172.17.2.YYY
図 10.3 db.gA 委任前
これで pcA1.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp, pcA2.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp の名前解決ができるはずである.pcA2 から nslookup で確認せよ.
次に pcA1 が自分のサブドメインである sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp ドメイン の情報を自分で管理する場合として設定する. この段階では pcA1 は sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp ドメイン の権威の委任を行わない. これは単に A レコードを追加するだけでできる. /etc/bind/db.gA に以下の 2 行を追加するだけでよい. ホスト名はピリオドで終っていないので完全ドメイン名でないことに 注意せよ.この場合はホスト名の後ろに .gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp が追加される.(172.17.2.VVV はpc A3 の IP アドレス, 172.17.2.WWW は pcA4 の IP アドレス)
pcA3.sub IN A 172.17.2.VVV pcA4.sub IN A 172.17.2.WWW
図 10.4 db.gA サブドメイン自前管理追加部分
これで pcA3.sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp, pcA4.sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp の名前解決ができるはずである.pcA2 から nslookup で確認せよ.
次に委任処理である.委任は NS レコードで行う. pcA1 の /etc/bind/db.gA ファイルの pcA3 の アドレス設定の上の行に以下の内容を追加すればよい.
sub IN NS pcA3.sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp.
図 10.5 db.gA サブドメイン委任
これで pcA1 には sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp. を管理する権威は無くなったので /etc/bind/db.A 内の記述から sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp. に所属するホストの A レコードを削除する.ただし次のネームサーバに処理を依頼する ために sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp. のネームサーバ の IP アドレスは知っている必要がある.このため pcA3.sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp に関する A レコードだけは残さなければならない.これをグルー(接着剤)レコードと よぶ.
最後に pcA3 のネームサーバを整備すれば終わりである. これは単純な委任なしの設定である.これまでの作業を参考に 設定せよ.
ゾーンファイル名を db.sub とする場合の設定例を以下に示す.
zone "sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp" { type master; file "/etc/bind/db.sub"; };
図 10.6 named.conf.local への追加行
$TTL 604800 @ IN SOA pcA3.sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp. root.pcA3.sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp. ( 201306171 ; Serial 604800 ; Refresh 86400 ; Retry 2419200 ; Expire 604800 ); Negative Cache TTL ; @ IN NS pcA3.sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp. pcA3 IN A 172.17.2.VVV pcA4 IN A 172.17.2.WWW
図 10.7 db.sub の例
これで pcA3.sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp, pcA4.sub.gA.1b202.jt.u-tokai.ac.jp, の名前解決ができるはずである.pcA2 から nslookup で確認せよ.
参考のため,教卓の named.conf.local, db.1b202, db.2 を以下に示す. db.2 は逆引き設定のためのファイルである.各ホストの IP アドレスと ホスト名の確認に使用できる.
実習 3.1 とは逆に図 10.1 の pcA1 と pcA3 サーバの役割を 入れ替えた図 10.2 の設定になるように 同様の実習を行え.IP アドレスの設定は変更しない.
図 10.2. 実習3.2 のドメインの構成
named.conf.local は実習 3.1 と同じ
第 9 回課題「DNS委任設定」 を提出せよ.