Scientific calculator for students
学生に推奨する関数電卓

まえがき

このページの内容は情報系の学生が持つ関数電卓として どの機種が良いかという情報です. 実務でバリバリ関数電卓を使うような分野の方はもっと一般的な 説明をされている良いサイトがすでにあります. 一般的な関数電卓の説明では以下のサイトが本サイトよりも 1E2 倍 以上有用なので是非ご覧下さい.

関数電卓マニアの部屋 (東海大学遠藤雅守教授)

情報系と関数電卓

いきなりですが,情報系の実務では単体の関数電卓は不要といっていいです. ほとんど PC が起動している状態で仕事をするため, PC を使って計算すればいいからです. 単体の電卓で素早く計算できても結果を PC に入力することが 目的である場合が多いので打ち直す手間がかかります.

しかし,試験となるとそうはいきません.試験に PC やスマホの持ち込みを 許可するわけにはいかないので計算が必要な科目では 電卓を使用させることになります. 学科の授業すべてをカバーする推奨機種を決め, 授業でも使用してもらうほうが学生も都合がいいだろうと考えたのがこの ページを作成した理由です.

情報系で必要になる機能はどんなものでしょうか. 情報系の授業の場合,電卓では三角関数すら計算すること がありません. CG では三角関数は必須ですが,授業を担当する教員に聞くと 試験は三角関数の入った式を書かせる形式であり, 数値を求めさせることはないとのことです. 実務では人間が計算することはありません. そう考えると,理系とはいえ情報系の学生にとっては 関数電卓は実はオーバースペックな道具なのです.

では普通の電卓でいいかというと,筆者が担当する 情報理論系の科目では log を多用するのですが, これが普通の電卓ではできません. そんなわけで止むを得ず関数電卓を使用します.

機種の条件

上記のことから情報系の学生に向いた機種の条件は以下のものになります.

関数電卓であれば機能は最低限で十分です.log は必須ですが あとは 2進数,16進数,論理演算が扱えたら便利かな, というぐらいです.

この条件だけで機種は絞られます. まず初心者に直感的で分かりやすい操作系として, 近年主流になっている「式通り入力表示」, と呼ばれるタイプから選ぶことに なります. (カシオでは「自然表示入力」と呼んでいます) これは教科書に書いてある式のような グラフィカルな形で式を入力できるもので, 関数電卓に慣れていない学生が最初に使う物としては このタイプがいいでしょう. 情報系の学生にとっては「ライン表示」と呼ばれる タイプも,まさにプログラムに式をキャラクタで入力する形式と 同じなので馴染みがあるとも言えますが,ここでとりあげる 「式通り」タイプの機種は「ライン表示」 もできるようになっています.

代表的な機種について, 本学科で必要になりそうな例題の計算をいくつか行い,操作性を比較します.

例題

log を使用する例題

以下の 3 ステップを順に行います.

  1. -((1/3)log21/3 + (2/3)log22/3)
    を求めてメモリー A にストアする
  2. -((4/5)log24/5 + (1/5)log21/5)
    を求めてメモリー B にストアする
  3. メモリー A の値に 3/4 を掛けたものとメモリー B の値に 1/4 を掛けたものの和を求める.

情報理論での条件つきエントロピーを求める計算です. 最終結果を求めるだけならメモリー B は使わずに, 計算した値から続けてメモリー A を呼び出しながら最終結果を計算するほうが普通の手順だと思いますが, 今回はメモリーの使いやすさも評価するためにこのレギュレーションにしました.

メモリー A に保存されるのは p = 1/3 の 2 元エントロピー関数の値,メモリー B に保存されるのは p = 1/5 の2 元エントロピー関数の値です. これらの値はだいたいわかるので 入力ミスがあればここで気付きます. 実際に電卓を使うときは,このように時々値を見るのも 重要です.

1. では全体にマイナスがかかるので log の真数を最初から 逆数として入力するとたいていの機種では入力が簡単になります.
(1/3)log23 + (2/3)log23/2 をメモリー A にストア
(4/5)log25/4 + (1/5)log25 をメモリー B にストア
こちらの式をエントロピーの定義としている教科書も多いです.

最終結果の正しい答は 0.8692 になります.

2進,論理演算を使用する例題

8 ビットの符号なし整数が 10 進で与えらるとし, 2 進にした場合の下位 4 ビットをすべて 1 にした 値を 10 進で得る例題です.IP アドレスで, ブロードキャストアドレスを求める時の計算に相当します. ここでは入力は 17010 であるとします.

正しい答は 17510 になります.

統計機能を利用する例題

1 変数の統計データ処理,2 変数の統計データ処理の例題です. いずれも統計データをクリアすることから処理を始めます.

1変数統計演算の例題

1 変数 x について以下の値と度数のデータを入力し,平均値を求めます.

x度数
01
31
44
56
65
72
91
103

正しい答は 5.739 になります.

2変数統計演算の例題

2 変数 x, y, について以下の値のデータを入力し, 相関係数を求めます.

xy
1.51.2
2.11.9
9.38.7
0.91.2
5.56.1
4.23.8
7.16.7
1.10.9

正しい答は 0.9921 になります.

お勧めの機種は

カシオ fx-JP500 と シャープ EL-509T を 安価で手に入り易く十分な機能を持っている機種としてお勧めします. この 2 機種を本学科での使用状況に絞って比較し, 「画面が高解像度で見易い」 という点から fx-JP500 を売店で販売してもらいます. 面倒な事を考えたくない 学生はそれを素直に買って下さい. 操作がわからない時に友達に聞けるのは大きいです. 特に情報系は関数電卓を使いこなす,というところまで使う必要は ありませんから.

自分でマニュアルを読むからこだわって気に入った機種を買う という意気込みの学生ならばそれもおおいに結構です.

初心者のための注意事項

このページの読者は関数電卓を初めて使うという人も 多いと思うので初心者がする定番のミスについての注意を しておきます.

2 つのマイナスキー
「引き算がエラーになります」と言われて操作させてみるとこの件でした. 関数電卓にはマイナス記号が書かれたキーが 2 つあります.一つは二項演算子のマイナスで, 通常は+の近くにあるでしょう.これが引き算に使うキーなので 引き算のマイナスと呼びましょう. もう一つは単項演算子としてのマイナスで カシオやシャープでは[(-)] と書かれたキーです. これは数の正負を逆転する演算子です.式の最初のマイナスや 2-3 なんかのマイナスですね.こちらを符号のマイナスと 呼びましょう.符号のマイナスを引き算に使うとエラーになります.
この 2 つのマイナスキーをしっかり区別するのが関数電卓使用の 第一歩です.符号のマイナスは記号の左に数が無いときにだけ使う, と覚えて下さい.印刷物の数式に近づく方向で現在の電卓は 進化しています.印刷物の数式ではマイナスは一種類で, 置かれている場所によってどちらのマイナスか区別されます. 電卓も引き算のマイナスキーだけで入力ができるように 工夫されつつあるのですがまだ不完全です. 現状では 2 つのマイナスキーをしっかり区別して使って下さい.
角度モード
「sin の値がおかしいです」といわれたらこれ.教科書では普通 三角関数の引数は radian 単位ですが電卓の初期設定ではたいてい degree (度)が単位です.セットアップメニューから設定するので 試験が始まる前に気付いておきましょう.
log の底
上と似た問題で,「log の計算結果が教科書と違う」 と,ときどき言われます.情報系の多くの教科書では底を省略して log とだけ書くと底は 2 という約束になっています. これは実は理系全体で見ると少数派で,工学系では 底が 10, 数学では底が e の時に底を 省略する傾向にあります.関数電卓は工学系に向けたものですので 単に log と書くと底は 10 になります. そういうわけで,関数電卓では底の 2 を明示する必要があります. 自分の電卓には loge, log10 しかない!? そんな場合は底の変換公式を使いましょう.

機種ごとの説明

ここから下の機種は学生にはお勧めしません. 普通の人は読まなくていいです.

旧機種


Updated in June 2, 2017, Yamamoto Hiroshi Web