一般的にネットワークといったときの意味と, インターネットを動作させているプロトコル群のTCP/IP(次章で説明がある) の中で出てくるネットワークの意味は違うので注意を要する.
TCP/IPではホストをIPアドレスで一意に識別するが, IPアドレスはネットワークアドレスとホストアドレスの組み合わせ で構成されている.郵便に例えると,家の住所がネットワーク アドレスだとすると, そのなかの家族の名前がホストアドレスだとみることができる. TCP/IPでいうネットワークは一つの部屋ぐらいの範囲で使われる, 同じネットワークアドレスのホストがつながった範囲をいう. こちらのほうが一般的なネットワークと離れた意味なので注意する.
この節でいうネットワークは一般的な意味でのネットワークである. 通信ネットワークの登場以前でもコンピュータ間の通信はできたが, メーカー独自企画による通信なので同じメーカーのコンピュータと 周辺機器でないと通信ができない限定されたものであった.
コンピュータや周辺機器が互いに通信する場合, 送信側,受信側が決められた手順を守って 通信を実行する.この手順のことを プロトコルという.
異なるメーカーの製品間でも通信できるほうがいいということで, プロトコルの標準化が行われるようになった. 共通のプロトコルを守るように作られた機器であれば メーカーが異なっていても通信ができる.こうやって プロトコルを標準化することで広い範囲で, 異なるメーカーの機種であっても相互接続が可能になった. ここではこれをネットワークといっている.
通信ネットワークシステムには教科書p.137図12.2のように データ伝送部分だけでなく,データ処理部分も含む. プロセッサもプロセッサ側のプロトコルを実行するからである.
教科書図12.2でいう通信回線はイーサーネットケーブルや USBケーブルなどの物理的な伝送路のことをさす.
ADSLは現在のような光ケーブルで家庭が結ばれる前の ネットワークの通信回線で,物理的には電話線を 使用したアナログ回線である.ADSL が普及しきるより先に 光ケーブルによる高速なデジタル回線が普及した.
ISDNはデジタル通信で,デジタル化した電話回線上で インターネットなどの通信を行おうとしていたものだが, 現在は逆に,普及した高速インターネットを使って 電話を利用するようになった.
回線終端装置(DCE)はプロセッサなどが送ってくる デジタル信号を使う物理的な通信回線にあわせた信号に変換したり, その逆を行う.
DCE はデジタル機器と物理的な通信回線の接点になっている. 回線がアナログ回線の場合はモデム, デジタル回線の場合はDSUとよばれる.
DCE は通信路側の終端で,DTE は機器側の終端という 位置付けである.
LAN は大学や企業の組織内に構成されたネットワークで, キャンパスや工場程度の規模のネットワークである.運用は その組織が行う.
教科書に記載のクライアントサーバーシステムと ピアツーピアシステムは,LANとは直接関係ない. LANでもWAN でも両方使われる.
WAN は大規模なスケールのネットワークということになるが, 意味合い的にはインターネット全体のうち, 庭や企業,大学などが管理している末端部分が LAN で, プロバイダなどインフラとして運用されているそれ以外部分 がWANというように使われる.
インターネットの技術が普及し,LANがWANによって接続される ことで世界規模の巨大な1つのネットワークが出来上がった. それがインターネットである.