Computer Network 3 Document 06
通信ネットワーク実習3第6回補足資料

2.4 TCP/IP の階層モデル(続き)

2.4.6 アプリケーション層

TCP/IP の階層では OSI参照モデルの上位3階層の セッション層,プレゼンテーション層,アプリケーション層は 一つの階層になり,「アプリケーション層」と呼ばれる. いずれもアプリケーションソフトウェアの仕事だからである. このため,アプリケーションのプログラムの中で プレゼンテーション層の仕事などが実装されている.

TCP/IP のアプリケーション層とトランスポート層の境目は アプリケーションプログラムの仕事かOSの仕事かで判断するとよい.

セッションをいつ,いくつ確立するかという OSI参照モデルのセッション層の仕事はアプリケーションプログラムで実装するので 最上位層からここまでがTCP/IPのアプリケーション層となる. アプリケーションは下位層である OSにコネクション確立の依頼を出す(インターフェース) それに応じてセッションを実際に確立するOSI参照モデルの トランスポート層の仕事はOSが行うのでここから TCP/IPでもトランスポート層になる.

クライアント/サーバーモデルではサーバープログラムは常に動作して クライアントから要求がくるのを待機している.

Web アクセス(WWW)

WWW が爆発的に普及したのはリンクが張れることやマルチメディアが 扱えることが大きな理由である.個人による情報発信ができる ツールとして普及した.

WWW のアプリケーションの内部で実現されている 機能とOSI参照モデルとの対応を考える. HTTP はウェブサーバとブラウザの通信プロトコルなので アプリケーション特有の機能を実現している部分だから OSI参照モデルでいうアプリケーション層に相当する. HTML はウェブ上のコンテンツの表現形式の指定なので OSI参照モデルのプレゼンテーション層にあたる.

電子メール(E-Mail)

教科書p.80図2.13 では A さんのホストから B さんのホストへ直接 メールを送信しているが,現在は普通このような送信は行わない. このような方式は教科書p.306 図8.9のような問題があるためで, 現在は教科書p.306 図8.10 のように常に稼働している メールサーバを介してメールの読み書きを行なっている.

メールに限らず,インターネットのアプリケーションプロトコルは ほとんどテキストデータのやりとりで行われる.マルチメディアを メールで扱うときも,何らかの符号化を用いてマルチメディアデータ をテキストデータに変換して送信する.受信側はどんな符号化を 行ったデータかわからないと正しく復元できないのでMIMEでは ヘッダにどんな符号化でデータが符号化されているかを 相手に知らせるようになっている.このことからMIMEはデータの 表現形式を扱うOSI参照モデルのプレゼンテーション層だということが わかる.

電子メールの送受信のプロトコルはアプリケーション層のプロトコルで これが守られていればスマートフォンでもPCのメーラーでもWebで読む 形式でも利用できる.

ファイル転送(FTP)

FTPのどの機能がプレゼンテーション層でどの機能がセッション層かが 教科書p.81注釈に書いてあるので理解しておくこと.

遠隔ログイン(TELNET と SSH)

TELNET では通信内容が暗号化されないが SSH では暗号化される. TELNET で外部からパスワードを入力してログインすると パスワードが平文で傍受される可能性がある.

ネットワーク管理(SNMP)

「エージェント」の概念を教科書p.82図1.16を使って説明する. 管理者は左側のSNMPマネージャで,管理される対象が 右側のパソコン,ルータ、スイッチである. 管理者(SNMPマネージャ)は管理対象の機器に エージェントと呼ばれるプログラムを設置する. エージェントプログラムは自動的に情報を収集し, マネージャに報告を行なったり マネージャからの指示を実行したりする.

このようにエージェントは相手の機器に送り込んでマネージャと通信しながら マネージャのためにある程度自律的に動作するプログラム, というイメージをもつとよい.

本文に書かれている,何がアプリケーションプロトコルで 何がプレゼンテーション層かを理解せよ.

2.5 TCP/IP の階層モデルと通信例

TCP/IP の各階層の働きをメールを送るという具体例について 処理の順に説明する.

2.5.1 パケットヘッダ

ヘッダとしてどんな情報をもつかを理解することが その階層の働きを理解する鍵である.

教科書p.83 図2.17 は,送信者の処理だとすると 下から上に処理されていくことに注意する. TCPプロトコルによってデータにTCP(4層)ヘッダが付けられる(一番下). これが次の階層のIPに渡されるとTCPヘッダとデータを合わせて IPのデータとし,IPでの処理方法を指示するIP(3層)ヘッダを 付加して下位層に渡す.次の階層のイーサーネットではIPのヘッダと データを合わせたものをデータとし, イーサネット(2層)のヘッダを付加して(2層では最後にトレイラも付加する) ネットワーク接続機器に送る

このように上位階層のヘッダとデータを下位階層のデータとして 新たにヘッダを付加する,ということを繰り返すので,階層が低いほど 多くの階層のヘッダを含んだデータを扱う.


Updated in May 24, 2022, Yamamoto Hirosh