Computer Network 3 document 02
通信ネットワーク実習3第2回補足資料

1.2

コンピュータとネットワークの発展の段階を 7つに分類して説明している.通信技術の発展の段階としては

バッチ処理→ タイムシェアリングシステム→ コンピュータ間通信→ コンピュータネットワーク→ インターネット

の順に発展しており,その後の2段階はどちらかというと使い方の発展といえる. 上の5段階の分類では次の時代で何が可能になったのかに着目するとよい.

バッチ処理とタイムシェアリングの違い
バッチ処理の時代は一人がコンピュータを使っている間は他人は使用できないのに対し, タイムシェアリングによって仮想的に同時にに複数のユーザーが一つのコンピュータを使えるようになった.
タイムシェアリングとコンピュータ間通信の違い
タイムシェアリングはコンピュータと端末は通信するが,コンピュータ間通信によって コンピュータとコンピュータの間の通信が可能になった.これによりあるコンピュータで 処理したデータを高速に間違いなく別のコンピューターで処理できるようになった.
コンピュータ間通信とコンピュータネットワークの違い
どちらもコンピュータとコンピュータが通信するのでわかりにくいが, コンピュータ間通信はとにかくコンピュータとコンピュータが通信できればいい,ということで, この時代は特定のメーカーのコンピュータの間でしか通信できなかった. コンピュータネットワークの時代になって異なるメーカーのコンピューターも 接続できるようになった.これは標準化されたプロトコル(通信のための規約)によって実現された.
コンピュータネットワークとインターネットの違い
コンピュータネットワークの時代は色々なプロトコルによるネットワークが混在していたが, TCP/IPというプロトコル群が普及し,最終的には全世界がTCP/IPによる単一のネットワークでむすばれた. これがインターネットである.この世界に一つのインターネットを「ネットワークとネットワークを結ぶネットワーク」 という意味の広義の「internet」と区別して the をつけ,固有名詞であることを表す大文字にして 「the Internet」と言うことが多い.

「インターネット技術中心の時代」は電話回線など今まではインターネットとは別の 技術で構築され,普及していたものがインターネットを利用して構築されるようになったことなどをさす.

「単につなぐ時代から安全につなぐ時代へ」はあらゆるものがインターネット につながって便利になった反面,セキュリティの確保が重要になったことをさしている. 便利になった反面,セキュリティに問題があると大きな被害を生む可能性があるためである.

1.3

ここではプロトコルとは何かを理解する.1.3.2節の説明をよく読んでほしい. いろんな国,会社を跨いだ標準化組織でプロトコルを決めている. 異なったメーカーの機器でも同じプロトコルに従うように作られていれば 通信が可能となる.コンピューターネットワークの構成にとって プロトコルは中核的な役割を果たす.

1.3.5節ではパケット交換という技術が登場する. これもインターネットを特徴づける重要なキーワードである. パケット交換技術ができる以前は大きなデータを送る場合でも データの最初から最後まで続けて通信していた.社内のコンピュータ間など 確実に通信できる場合はそれで問題なかったが,インターネットのプロトコルは 途中で障害があっても通信できることをめざして設計された.(2章で詳しく説明する) そのためのアイデアが,

というものである.

1.4

この節のポイントは標準化である. 機器間で通信ができるためには同じプロトコルに従えば良い. 一つのメーカー内ならそれは簡単で,標準化が行われる前は実際に メーカーごとに独自規格を作り,全てを1社の製品でそ揃えれば通信できる, という状態だった(1.2.3節のコンピュータ間通信).

どの会社の製品とも接続できたほうが便利なので メーカーを超えた「標準化会議」を設け,標準化プロトコルを決めるようになった. この標準化プロトコルに従うように製品を作ればどのメーカーの製品であっても 互いに通信できる(1.2.4節のコンピュータネットワーク). 電池のサイズがメーカーごとにバラバラだったらどれだけ不便かを想像すれば 標準化の重要性は理解できるだろう.

1.4.2節では標準化の組織として国際標準化組織のISO, 任意団体のIETFがあげられており,インターネットのプロトコルである TCP/IPはIETFが標準化を行ったものであるが,基本的な設計方針として ISOの考え方(OSI参照モデル)を利用している.

1.5

1.5節のポイントは階層化である. 階層化の意味,メリットは1.5.2節の説明をよく読んで欲しい. この例は通信機械のプロトコルと言語のプロトコルの階層化ができていれば

という例である.階層化ができていれば他の階層を意識せずにそれぞれの階層のプロトコルをより良いものにするためにチューニングできる.

階層を理解した上で1.5.1の図1.16を見てほしい.この図で押さえてほしいのは

ということである.

1.5.3節で重要なキーワードのOSI参照モデルが登場する.

OSI参照モデルとOSIプロトコルを混同しやすいので注意が必要である. どちらもISOが作ったものだが,OSI参照モデルが概略設計, OSIプロトコルはそれを具体化したプロトコル,という関係である(図2.1).

図2.1

図2.1 OSI参照モデル,OSIプロトコル,TCP/IPの関係

OSIプロトコルは結果的に普及しなかったが概略設計の7階層の OSI参照モデルは優れたもので,広く利用されている.IETFが標準化を行って実際に普及した プロトコルである TCP/IP も OSI参照モデルを参考にしている.

1.5.4節のOSI参照モデルの各層はこの学科の多くの科目で中心的な 役割を果たすので階層の名前とその役割を暗記しなければいけない.

図1.19がよくまとめられていてわかりやすいのでこれを読んで理解する. この中で第5層のセッション層の機能の理解が難しいので注意する必要がある. セッション層の機能として 「コネクションの確立/切断」と書かれているが実際にコネクションを 確立/切断するのは第4層の機能で,第5層では「いつコネクションを確立するか」 「何個のコネクションを確立するか」ということを扱う. (1.6.2節で詳しく説明されている)


Updated in May 13, 2020, Yamamoto Hirosh